過日読者の方より、「飲食店ではQ(クオリティー(商品品質))S(サービス)C(クレンリネス(清掃))が大切だと口酸っぱく言われてきたが、QSCと「オペレーションの標準化」の関係がよくわからないので教えて欲しい」といった主旨の質問を頂戴しました。
とても良い質問です。
また、この点を説明していなかったことに気付けましたので、今回はQSCとオペレーションの標準化の関係を5分程度で理解できるようわかりやすく説明します。
目次
オペレーションが標準化されていなければQSCの基準は定まらない
オペレーションの標準化とQSCの関係を主従関係で言えば、オペレーションの標準化が「主」であり、QSCは「従」となり、決して並列な関係ではありません。
つまりオペレーションが標準化されていなければ、QSCを追求しようがないのです。
■QSCは「他者基準」ではダメ
飲食店におけるQとは主要商品となる「料理の品質」を主に示します。
品質という言葉では堅いし、少々わかりにくいので「美味しさ」という言葉に置き換えると幾分わかりやすくなります。
飲食店が大切にしなければならないQSCの「Q」とは、常に美味しい料理を提供することとなります。
しかし、美味しい料理という評価は抽象的で、地域性等によっても好みが異なります。
北海道の方が「美味しい味」と思っても、九州の方は「味が薄い(あるいは濃い)のであまり美味しくない」となる場合もあります。
要は他者基準ではダメだということです。
■オペレーションどおりに作ることが「Q」となる
そこで重要になるのが、標準化されたオペレーションに基いて作られた料理という訳です。
例えば5分煮込んだ場合と10分煮込んだ場合では料理の味は異なってきますが、Qの観点から求められることは仮に5分煮込むことを標準化しているなら、時間通り5分煮込んで作った料理が「Q」を追求する上では正しいとなります。
仮に5分煮込んだ料理と10分煮込んだ料理で料理の味比べを日本の全国民を対象に行ったところ、「美味しい」と評価する人数が5分も10分も同数、あるいは10分の方が美味しいと評価する人数が上回っていたとしてもです。(5分がゼロということであれば問題外ですが)
大切なことはそのFCチェーンがどのような料理を美味しいと感じる客層を、あるいは地域を主要ターゲットにしているかということです。
そうしたお客様へ商品を販売するために最適化されたオペレーションが標準化されているのであれば!(という前提条件が伴います)、オペレーションに忠実に従うことが、QSCにおけるQを追求することになります。
Sもそうです。
高級ホテルにおける上質な顧客サービスは、一般論としてサービスの品質は「高い」となります。
しかし、飲食店によっては高級ホテルで提供されるような上質なサービスより、正確に、何よりスピーディーに料理を提供することが求められる場合があります。
牛丼やハンバーガーといったファストフードレストランが代表的な例ですね。
更に言えば「サービスのスピード」を比較した場合、ファストフードレストランに求められるスピードとファミレスで求められるスピードは異なります。
仮に「お客様に○という料理は☓秒以内に提供する」という点が標準化された場合、☓に挿入される数字はそれぞれのフランチャイズチェーンによって違ってきますので、それぞれのチェーン店において要求される☓秒をクリアし続けることが「Sのに品質を維持すること」になりますし、そうでなければなりません。
同様に「C」も髪の毛一本でも重大な健康被害を招きかねない乳飲料製品などの食品工場と、オープンスペースで軽食しか提供しない飲食店でそれぞれ求められるCの水準は異なります。
標準化されたオペレーションを忠実に行うこと=QSCが高い
こうした事例でおわかりになったとおり、QSCは一般論だけで良い、悪いとは一概に評価できないものです。
チェーン店ごとに標準化されたオペレーションを正確に実行することで実現される結果が、そのチェーン店でのQSCの基準となりますし、ならなければなりません。
QSCの品質を維持することとは、標準化されたオペレーションを正確に実行し続けることによって可能になります。
またQSCを高めるために必要なこととは、標準化されたオペレーションを徹底することだと考えて頂いて構いません。
飲食店のQSCとオペレーションの標準化はこうした関係にあるのです。