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M&A市場の確立は店舗増につながる!
FC加盟店のM&A市場が確立されることはFC加盟店や加盟を検討している方々だけではなく、フランチャイザーにも大きなメリットがあります。
以前、あるフランチャイザーへFC加盟店のM&Aをある程度自由に認めるべきであるとの提言をしたところ、「オーナーがチェンジするだけなので店舗数が増えない」との指摘を頂戴しました。
本当にそうでしょうか。
短期的に考えればそのとおりですが、長期的には店舗数増大を見込むことはできます。
例えば平均月商で600万円以上の店舗が新しいオーナーへ譲渡された場合、看板や商品などが変わる訳ではないので譲渡後すぐに売上が半減することなど殆ど考えられません。
特に、オペレーションの全てがアルバイトでまかなわれている店舗なら、(アルバイトごと引き継げば)習熟したオペレーションで運営を継続できます。
何よりオーナーが何をやるべきかマニュアル化されていますので、譲渡を受けた後の運営で何をすべきか迷ったり、悩んだりすることもありません。
その結果、FC以外の一般企業や事業のM&Aを行なうより、FC店舗をM&Aで取得した方が譲渡後の売上維持を見込めやすくなります。
こうした高い確率で売上見通しが成り立てば、FC加盟を検討している個人や中小企業だけでなく、M&Aによって経営多角化を図ろうとしている企業のFC加盟参入を促すことになります。
M&Aや新規事業への投資意欲が旺盛な企業の参入を促すことができれば、そうした企業は1店舗の運営では飽き足らず(譲渡された店舗の運営が上手くいってれば)多店舗展開についても積極的に取り組んでくれる可能性が大いに高まります。
その結果、長期的には店舗数の拡大を見込むことができるようになる訳です。
1店舗目の成功が大事!
M&Aを主眼としていない個人や中小企業へのオーナーチェンジの場合でも、堅実な売上見通しが立てば資金回収不安が和らぐため、次の出店(投資)に意欲的になれるものです。
その点は自身の経験に照らしても自信をもって言えます。
当時加盟していたFC本部からは熱心に2店舗目の出店を要望されましたが、とても出店する気にはなれませんでした。
新規出店後長期に及ぶ赤字経営で苦しんだ経験をしてしまうと、どうしても2店目、3店目の出店は慎重になってしまいます。
その一方、多店舗展開に踏み切ったオーナー仲間の共通点は「1店舗目が早期に成功し、赤字で苦しんだ経験があまりない」というものでした。
つまりそれだけ「1店舗目の早期成功」が大切だということです。
新規出店を経験しない限り直営店の譲渡は認めないという愚
少し記事の主旨からずれますが、直営店譲渡を認める条件として「新規出店を行い、経営を軌道に乗せること」を条件としている飲食系のフランチャイザー企業がいます。
そうした考え方も理解できますが、長期的に考えればフランチャイズビジネス発展の阻害要因になってくると思われます。
そのような発想になるのは、フランチャイザーとフランチャイジーの関係を親子関係のように捉える古い考え方がおそらく根底にあります。
FC加盟を検討されている方々は、経営者として勉強したい、教えを請いたいからFC加盟を検討するのではないということです。(そうした発想の方も例外的にいますが、そのような方々は少数派です。)
よりリスクの少ない事業、成功の確率が高い事業としてFC加盟を検討するのです。
「やってみなければ成功するかどうかわからない新規出店」と「一定水準の売上が確実に見込める加盟店の譲渡」という二つの選択肢があるなら、後者を提示することがニーズに応えることだと言えるのではないでしょうか。
勿論、加盟店を譲り受けたFCオーナーに対する研修のあり方など、検討しなければならない点はあります。
また、加盟店の譲渡についてフランチャイザーが積極的に仲介者と関わるのか、外部ブローカーに担ってもらうべきなのか、整備しなければならない点もあります。
従って無条件に認めろとまでは申しません。
しかしながら、フランチャイズ業界全体の活性化を考えるなら、フランチャイザー各企業は加盟店のある程度自由な譲渡をもっと真摯に検討すべきタイミングがきていると言えます。