アルバイトの時給アップはモチベーションシステムの要
今回は久々に、現役のFCオーナーの皆様へお伝えしたいことです。
記事の表題どおり、皆様はアルバイト、あるいはパート従業員(本記事では以後アルバイトと呼称します)の時給アップから目を背けてはいけません。
私はこのブログの中で、CS以上にESが大切であること、ESを向上させるには「モチベーション」ではなく「モチベーションシステム」が大切であることを繰り返し、訴えてきました。
モチベーションシステムは決して「時給アップシステム」のことではありません。
アルバイトのモチベーションは、時給さえ引き上げれば向上するといった単純なものであれば、FCオーナーは誰も苦労しなくて済む訳です。
時給以外でも、様々な角度からやる気を高める仕組みを創出し、それを公平なシステムとして店舗経営に取り入れていくこと・・・
その総称がモチベーションシステムですので、これまでの記事では誤解を招かないよう「時給アップ」についてはあえて触れないようにしてきました。
しかし、公平且つ客観的な評価に基づいた時給アップシステム「も」モチベーションシステムのひとつです。
誤解をおそれずに申し上げれば、時給アップシステムはモチベーションシステムの最も大きな柱でもあるのです。
FCオーナーの皆様は、決してアルバイトの時給アップから目を背けるべきではありません。
「あわよくば最低時給でずっと使ってやろう」といった貧相な発想をしていれば、短期的には収益的にプラスに作用しても、長期的にはESを低下させ、それがCSの低下へとつながり、結果的に、店舗からの客離れ=売上の低下を招くことになります。
つまり、時給アップはアルバイトのためであるのと同時に、お客様のためであり、結果として店舗の長期的な存続と発展において欠かせない取り組みです。
アルバイト争奪戦はすでに全業種で起きている
アルバイトの時給アップは、モチベーションシステムという観点から大切だとお伝えしましたが、それだけではありません。
アルバイトの争奪戦は、決してコンビニ・飲食業界に限定された話ではないということです。
このブログでは度々少子高齢化問題について触れていますが、少子高齢化によって引き起こされる現象はマーケットの変化だけに留まりません。
店舗運営おいて重要な「労働力の減少」をすでに引き起こしています。
実際、私の元にも様々な業種業態のFCオーナーから
「アルバイトの求人広告を出してもなかなか応募がない。このままでは店舗運営に支障が生じそうだ。」
といった、悲鳴に近い声が多数寄せられています。
モチベーションシステムがそうであるように、アルバイトの応募者は決して時給だけで職場を評価している訳ではないのです。
職場の雰囲気、働きやすさ、通勤しやすさ等々、様々な観点から総合的に評価した上で応募先を選んでいます。
時給を上げさえすれば、応募者が増えるといった単純な話ではありません。
しかし、大学入試ではありませんが、応募者側にとって「時給」は「足切りライン」になっていることも認識しておく必要があります。
アルバイトの職場探しはほとんどがネット検索で行われますが、最低欲しい希望時給は当たり前のように検索条件となりますので、時給が低い職場は
「検索にすら引っかからない」
状況に落っていると言っても、過言ではないのです。
従って、十分条件ではなく、あくまで必要条件としてアルバイトを確保する段階から、「周辺の競合する職場に勝てる時給」を設定することが、アルバイト確保において避けられなくなってきているのです。
なお、そのような状況下で、現有のアルバイトだけ時給を据え置くなど、愚の骨頂です。
そんなことをすれば、気前よく昇給してくれる、アルバイトにとって美味しい他の職場に人材を奪われてしまうだけとなります。
売上があがらない中どうやって人件費の上昇を吸収すれば良いか
アルバイトの時給アップが避けられないことは理解頂いたとして、問題は人件費のアップをどうやって吸収するかです。
仮に人件費を5%上げても、売上が対前年でそれ以上アップしていれば、その分をカバーできますが、売上が横ばい、下がっている状況ではなかなか苦しいのは事実です。
ならば、現在の支出項目を見直し、削減できるものは削減することが現実的で、有効な対策になります。
また、あくまで関係次第ですが、テナントオーナーと「売上が回復したら家賃も戻す」ことなどを条件に、家賃の減額交渉を行うのもひとつの方法です。
それでも時給アップ分を吸収できない場合には、決して安易に提言するつもりはありませんが、オーナー自身の報酬は多店舗展開などで増やすこととし、自身の一店舗あたりの報酬を削ることも考えるべきでしょう。
先ほど「オーナーの報酬を削る」という表現をしましたが、経営者としてアルバイト従業員が活き活きと活躍できるシステム維持に資本を注ぐことは、「投資」だと言えます。
FCオーナーの皆様は、決して近視眼的にならず、長期的な視点からアルバイトの時給に向き合って頂きたいと切に願っております。