今回は、加盟者自身に「労働力」を提供してもらうことを前提にしているフランチャイザー企業への提言となります。
つまり、FCオーナーが店長として店舗に立つことが加盟条件になっており、オーナーが店舗に立って働かなければ、一店舗ではオーナーの給与を賄えない場合です。
そうした条件、あるいは収益構造のFCを展開しているフランチャイザー企業も
「投資型の加盟方式」
を検討すべきです。
従来方式を否定したいのではありません。
もちろんフランチャイズの業種業態や事業構造によっては不可能な場合もあることは、十分理解しております。
しかし資金だけでなく、労働力も提供しなければならない点が、FC加盟の妨げになってしまうこともあるのも、これまた事実です。
この問題を解決する最もわかりやすい、究極的な対策が、資金だけの提供で加盟を認める方式、すなわち「投資型の加盟方式」だからです。
頭から無理だと考えず、一度検討しみてください。
不可能だと考えていた加盟方式を検討すれば、別の新たな方策やアイデアが生まれ、従来では想定できなかった加盟者獲得につながる可能性だってありますから。
むしろ、FC加盟者自身の労働力投入を条件にしているフランチャイザーこそ、検討する価値は必ずあります。
目 次
投資型のFC加盟方式とは?
投資型の加盟方式を用意しているフランチャイズチェーンはあるにはありますが、まだ少数派ですよね。
ここで、定義にズレがあっては元も子もないので、投資型の加盟方式とは何かを、確認の意味で定義しておきます。
投資型の加盟方式とはそのネーミングのとおり、加盟者がフランチャイザーに提供するものが
「初期投資費用(+場合によっては半年程度の赤字を補う運転資金)」
のみで、店舗が開設された後の運営は、原則としてフランチャイザー本部へ行う方式のことです。
この場合、利益をどう分配するかですが、月間売上☓N%を加盟者に支払うというスタイルが一番わかりやすいでしょう。
あるいは、月度の経費項目が確定させやすい事業なら、営業利益を毎月算出してそれを折半したり、本部6:加盟者4などといった割合で分けたりする方式等もあります。
この投資型加盟方式のメリットですが、このように整理されます。
■加盟者側
・店舗運営や資金繰り、人材採用や育成等に悩む必要がない
・自分の時間を確保できる
・本部に運営を任せることができるので、高い水準の運営と毎月安定した売上配当が期待できる
こうしたメリットがありますので、資金はあるが体力的な問題などで自分の労働力を提供できない方でも、加盟を検討できるようになります。
■フランチャイザー側
・加盟金収入を得られる
・出店費用を全て他者資本で賄える
・加盟者の研修や店舗経営指導の手間やコストをカットできる
フランチャイザー側にもこうしたメリットがありますので、検討する価値はある訳です。
投資型の加盟方式には勿論デメリットもありますが・・・・
私は投資型の加盟方式の導入を、多くのフランチャイザー企業に提案するのですが、正直、反応は良くありません。
要はデメリットがあるからですが、投資型加盟のデメリットは大きくふたつあげられます。
ひとつは新たな人材を確保し、労働力を本部が提供しなければならなくなること。
従来の加盟オーナーが労働力を提供する方式であれば、これが不要だった訳です。
大きな負担になると言えば、確かにそうですね。
フランチャイザーの中には、加盟金以上に店舗労働力を得たいからこそFC方式を採用されている企業もあるかと思われますので、その点は理解できます。
もうひとつは、責任とリスクの拡大です。
直営店であれば、万一店舗運営がうまくいかなかったとしても、自主的判断で店舗の閉鎖も自由に決定できます。
が、加盟者に出資してもらった店舗となると、そうはいきません。
投資型で加盟者を募る場合、出資法の規制上「利益保証」こそできませんが、投資したくなるような魅力的なスキームを構築する必要があります。
となれば、店舗の売上が低迷したまま放置することなど許されなくなるでしょうし、場合によっては直営店以上に力を注いで運営しないと道義的責任も果たせなくなることもあります。
そうした余計な責任とリスクまで負ってまで、他者資本での出店にはこだわりたくないとの理由も、これまたよく理解できます。
高齢者の財力活用もチェーン店の発展につながる
しかし、そうしたデメリットばかりを重く見て、投資型方式に背をむけ続けることがフランチャイザーにとって正解だとは、私には思えません。
なぜか。
日本はご存知のとおり、少子高齢化により日本の人口に占める高齢者割合が間もなく3割を越えようとしています。
この変化は、マーケットにおける高齢者割合が増えることだけを意味しているのではありません。
「労働人口の減少」という日本企業全体にとっての大きな問題となって、我々跳ね返ってこようとしているのです。
つまり「加盟者を通じた労働力確保」もやがて難しくなってくることを意味しています。
また、資金を最も蓄えている層と言えば、やはり高齢者の方々です。
この高齢者の方々の資金を上手く引き出し、自社の発展に活用することは企業の業種業態を超えて、積極的に検討すべきと考えています。
その方策のひとつが今回ご提案している「投資型の加盟方式」という訳です。
ところが・・・、私の目には、フランチャイザー企業の皆様は、総じて高齢者の加盟検討者の方々に冷たいように見えています。
少々前の話となりますが、あるフランチャイズチェーンの合同説明会に参加させて頂いた時の話です。
意気揚々と会場に入ってきた、60代後半~70代ぐらいと思われる高齢者の方がとても気になったので、その方をしばらく席から観察していました。
すると、どのブースを訪問してもすぐに追い払われていることが、遠目から伺えました。
中には資料すら渡さなかった、フランチャイザーもあったようです。
最初は元気だったのに、どのブースでも冷たくあしらわれてしまったことにがっくり肩を落とし、意気消沈しているご様子だったので、こちらから声をかけ、話を伺ってみました。
その方曰く、たった一人のご子息がリストラにあってしまい、現在派遣社員でギリギリの生活を強いられているとのこと。
正社員をめざして就職活動していたが、ことごとく断られ、正社員になることすら諦めてしまったそうです。
そこで、ご子息が主体的に希望をもって働ける仕事場をなんとか提供したいとの思いから、フランチャイズ加盟を検討されたとのことでした。
こうしたケースは、レアケースと片付けて良いものでしょうか。
企業は目まぐるしく変化する時代環境に合わせ、自ら変化していくことが求められます。
高齢化社会が進む中、フランチャイズチェーンは、オーナー獲得という分野でも、新たな対応に迫られているはずです。
労働力を提供したくともできないが財力を有する高齢者の加盟・・・
真剣に検討すべき時期が到来していると私は思います。