ケーススタディ「かつや」での出来事 – フランチャイズという選択

フランチャイズという選択

フランチャイザーとフランチャイジーの両方を経験したコンサルからのメッセージ

FCオーナーへのアドバイス

ケーススタディ「かつや」での出来事

                      

かつやは皆様もご存知の、カツ丼やトンカツのチェーン店ですね。

私も一顧客としてかつやは好きな飲食店のひとつで、なかでもロースカツ定食はお気に入りの一品です。

さて、本記事は、そのかつやで最近出来た店舗(仮にA店としておきましょう)へ”顧客”として来店した際に、気付いた問題点とその対策をご紹介したいと思います。

舞台がかつやとなりましたが、この問題点は何もかつや特有の問題点ではありません。

イートインの飲食店であればどこでも起き得る、ポピュラーな問題点ですので、特に飲食店のFCオーナーの皆様に参考にして頂きたいと思います。

 

ピーク時のスタッフの動きがチグハグ

私がかつやのA店を訪問したのは、金曜日の午後7時頃です。

午後7時と言えば、飲食店にとって平日夜間のピークの時間帯ですが、店舗面積や客席数から言って、フロア、厨房共にピークに対応できる十分な数のスタッフが働いていました。

ところが・・・・

非常に回転が悪く、かなり待たされることになりました。

混雑時にはテーブル席が空いたら速やかに食器を片付け、テーブルを清掃し、次のテーブル席待ちの顧客を速やかに空席へ案内するのが鉄則です。

ホール担当のスタッフ数は充実していたにもかかわらず、ケトルにお茶を注ぐことだけ熱心やっているスタッフ、空いていないテーブル席ばかりチラチラ見るものの、なぜか空席には気を配ろうとしないスタッフ等々・・・

ピーク時のフロアを回転させる動きとしては、お世辞にも褒められた状況ではありませんでした。

待っている多くのお客様が、イライラを募らせながら客席を眺めている様子もよくわかりました。

ただ・・・

私はスタッフの方々に対する苛立ちを、実はそれほど感じませんでした。

明らかにやる気がなかったり、手を抜いたりしているのではなく、指示されたことは懸命にやっていることがわかったからです。

むしろ、指示通り動いているスタッフの方々は気の毒にすら思えていました。

 

「Q」と「C」は問題なかっただけに残念

ようやく席に案内されたのですが、チグハグな状況はこの後も続きます。

ケトルにお茶を懸命に補充しているスタッフがいましたので、私の目の前のケトルはお茶がたっぷり入っているだろうと思いきや・・・

なんとそのケトルはほとんど空の状態でした。

お茶を補充しているスタッフは私に背を向けた状態で、しかも私の席からかなり離れた位置で作業していましたので、そのスタッフには声をかけられません。

そこで、近くで待機していたスタッフに声をかけたてお茶の補充を依頼したのですが、少々困惑した顔で他のスタッフに何かを尋ねまわっているようで、なかなかお茶の補充は実現しませんでした。

オーダーする場面でも、明らかに手が空いているスタッフに視線に送っているのになぜかこちらに来てくれない、注文したメニューを運ぶ場面でも、運び先を間違えてしまう等々、そんなこんなで、スタッフの動きは店舗を出る最後の最後までチグハグさは解消しませんでしたね。

ただ・・・A店の問題点はQSCの内、S(サービス)に限られており、Q(商品のクオリティー)とC(清潔な状況の維持)については何も問題はありませんでした。

A店で食べたロースカツ定食は間違いなく、かつやの標準的クオリティーを維持しており美味しかったです。

それだけにスタッフのチグハグな動きは、一顧客として残念だったというか、良い店なのにもったいないと思えてなりません。

 

一番の原因は店長がフロアを見ているが見えていないこと

さて、皆様はここまでの状況を読まれ、こうした問題が起きた原因は何だと思われたでしょうか。

「新しくできた店なので、仕事に慣れていない、採用されたばかりのスタッフが多かったから」

・・・う~ん、もしこの回答が一般読者の方であれば合格点ですが、FCオーナーの回答だとしたら不合格ですね。

出来たばかりの店=採用されたスタッフも仕事に慣れていない者が多いという状況は、何も「かつや」に限られる話ではありません。

オープン当初はスタッフが仕事に慣れていないことを前提に、店長、もしくはフランチャイズ店であればFCオーナーがスタッフのオペレーションを直接手伝うなど、汗をかきながら丁寧に陣頭指揮をとることが求められます。

ところがA店の店長は指示を出すだけで、仕事に不慣れなスタッフに対するフォローやサポートがまず不十分であったことが原因のひとつです。

しかし、A店の場合は、フォローやサポートが不足していたこと以上に大きな原因がもうひとつありました。

それは店長が「フロア全体が見えてない」ことです。

店長と思しき人物は、時々フロアは見ていました。

ところが、改善すべき事象が多数起こっているにも関わらず、自分が「見えている(=気付けた)」領域だけで指示を出していることが、彼を観察していてよくわかったのです。

では、「フロア全体が見えてない」という問題はA店店長の個人的な資質や能力の問題だったのでしょうか?

そうではありません。

フロア全体が最も見えているはずの店長が、お客様やパートスタッフ以上に店舗状況が見えなくなる・・・

実は、かくいう私自身も店長時代に経験していることです。

更に申し上げれば、店長時代だけでなく、SVになってからも恥ずかしながら「見えなくなる」症状に悩まされた経験があります。

本当に店が見えているか?疑ってかかることが大切

皆様が採用されている店長、あるいはオーナー自身、自分の店の状況がよく見えているでしょうか。

店舗内で問題が起きていればすぐに気付けると、本当に自信をもって言えるでしょうか。

この問題を解決する、即ち見えていない状況を店長が克服する方法はたったひとつしかありません。

それは

「自分は店全体を見渡せているようで、見えてない領域が必ずある」

と自覚することだけです。

良い意味で自分の視覚を疑うことです。

そうした自覚がないままフロアコントロールを続ければ、視野は狭くなってしまい、見落としが徐々に拡大してゆきます。

今回はたまたまかつやを舞台に、”見えてない店長を見た”ので記事にしましたが、ぜひ他山の石として、今後の店舗運営改善の参考にしてください。

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自己紹介

私は現在、コンサルタントとして

・事業のフランチャイズ化支援
・フランチャイザー企業の経営支援
・顧客満足度(CS)調査・改善

を主なテーマにコンサルティング活動を行なっております。
近年、企業経営者や個人の方々からFC加盟についても相談を受けるようになりましたので、お役に立てればと考えこのブログを開設いたしました。

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