モスバーガーはメディアなどから「業績不振」と指摘されて久しい状況となっており、本ブログでもモスバーガーの分煙判断を厳しく指摘致しました。
しかしながら、モスバーガーの業績不振は決して分煙だけが原因ではありません。
では他にどんな原因があるかですが、メディアの記事をなぞっても意味がありませんので、FCコンサルタントとして、主に「フランチャイズビジネス」という側面から原因やその処方箋を探って参ります。
モスバーガー不振の原因は「オーナーの高齢化」ではなく呪縛と閉鎖性
モスバーガーが業績不振の原因となった理由として、分煙以外で多くのメディアが指摘しているのが「オーナーの高齢化」です。
モスバーガーは、FCオーナー自ら店長として運営するスタイルが主流となっています。
そのため、店長の高齢化は店の生産性や活気の衰退に繋がり、業績不振を招いたという説明ですが、この説明は「結果の説明」としては正しいです。
が、「原因の説明」にはなっていません。
モスバーガーより業歴が長いフランチャイズチェーンは多数あります。
オーナーの高齢化問題が避けて通れない問題なら、モスバーガーより業歴が長いFCはすべて同じ問題に直面するはずです。
つまり、オーナーの高齢化は不振の原因ではなく、オーナーの高齢化に対し具体的な対策を講じなかった(あるいは講じられなかった)フランチャイザー側の対応に、原因を求める必要があります。
ではモスバーガーがなぜ高齢化に対して具体的な対策を講じられなかったかですが、一言で言えば「呪縛と閉鎖性」です。
実はモスバーガーは、私自身にとって、加盟先の一候補でした。
しかし、モスバーガーは創業者の故櫻井氏があまりに天才的な経営者だったため、フランチャイズ加盟について、良くも悪くも先代のスタイルが継承されていました。
良い部分は守ってしかるべきです。
しかし、一加盟候補者として、当時の私の目にモスバーガーは大変申し上げにくいですが
「櫻井氏の指針やスタイルにこだわるあまり、革新やチャレンジすることを放棄し、守りだけに入ってしまっているフランチャイズチェーン」
と映りました。
また、良く言えば櫻井氏の代から頑張っているオーナーを大切にしていました。
が、新規参入を検討している個人や中小企業にとって、一種の参入障壁のようになっていると強く感じました。
モスバーガーにまだ信頼性やブランド力がない頃、リスクを背負って加盟してくれたオーナー達を大事にすることは、決して間違ってはいません。
しかしモスバーガーの場合は、「大事にする」を通り越し、一種の村社会のような閉鎖性を醸し出していたのです。
しかしながら、こうしたことは外部から客観的に見ないと気付きにくいことだったかも知れません。
当時私は、こうした見解を率直にモスバーガー側へぶつけました。
が、表面的には紳士的な態度ながら
「モスバーガーの経営のことを何もわかっていない若造が偉そうに」
といった雰囲気が伝わってきましたので、加盟先の候補から外した・・・というのが当時の経緯です。
つまりモスバーガーはかなり前から、こうなることが十分予見できる状況だった訳です。
二等立地+カジュアルで高級店というアンバランスなコンセプト
モスバーガーの不振要因は、分煙や高齢化以外にもいくつか要因がありますが、特に大きな要因としてあげられるのが
「二等立地重視の出店戦略+食器なしで食べるカジュアルなスタイル、なのに(価格は)高級志向」
というアンバランスな店舗コンセプトです。
モスバーガーはマクドナルドとの差別化をはかる狙いもあって、繁華街のど真ん中や駅前の一等立地より、そこから少し歩く二等立地を中心とした出店戦略に取り組んできました。
二等立地にも高級店は存在しますが、二等立地は高級店が主軸となる出店エリアではありません。
一等立地より住宅エリアに近付くことになりますので、着替えずに軽装で利用できる、つまりカジュアルな店が好まれる傾向があります。
また、モスバーガーの店の作りや接客スタイルは、マクドナルドやロッテリアとほとんど変わりません。
少なくとも高級レストランのようにテーブルに着席し、箸やフォーク、ナイフを使って料理を楽しむといったコンセプトではないですよね。
そのため、いくら声高に
「ファーストフードではない。高級な飲食店だ」
と訴えても、一般ユーザーにはマクドナルドやロッテリアと同様にしか映らないのです。
それだけにモスバーガーの商品価格は、ユーザー側に必要以上に割高感を与えていた訳です。
そこに追い打ちをかけるように、シェイクシャックなど、本場米国から高級ハンバーガーブランドが出店したことで、高級ハンバーガーと国内のファストフードとしてのハンバーガーで市場的な棲み分けが確立してきました。
その結果、市場的に更に中途半端な立ち位置に追いやられたことも、モスバーガーの業績不振を招いている大きな要因になっていると見られます。
大体なオーナーの刷新と価格戦略の見直しが必要
モスバーガーの業績不振の要因を二点ご紹介しましたが、ではどうすればこれらの問題が解決するか、それぞれ私なりの対策をご紹介したいと思います。
まずオーナーの高齢化問題は、FCチェーン店の新陳代謝を図る以外、解決の術はありません。
そのためには「既存店オーナーファースト」ではなく、「新規参入オーナーファースト」へと180度方針を転換させる必要があります。
資金力は乏しいが、意欲のある若い方々に加盟してもらえるよう、櫻井イズムは封印し、資金面でのハードルを下げて加盟しやすい制度を早急に整えるべきです。
また高齢となったオーナーが店舗を手放す際、資金力や実力のあるオーナーにチェンジしてもらう手法は経営的安心感が高いことは理解できますが、この点にもメスを入れる必要があります。
既存店はオーナーチェンジではなく、新規参入を目指している方々へ優先的に譲渡すべき案を私なら提言します。
売上が安定している既存の優良店を引き継いで運営をスタートできるとなれば、資金だけでなく、経験という点で不安を抱えている若手オーナーが勇気を持って手を上げてくれるきっかけに必ずなるからです。
もちろん、新米オーナーには運営経験がない訳ですから、譲渡したために店舗のQSCが低下し、売上が下降するリスクは当然増えます。
そうならないよう、新米オーナーのスキルを高める指導方法やシステムを開発することが本部の仕事であり、課題でもあるのです。
次に価格に関する問題ですが、すでに二等立地へ多数の出店している以上、出店レベルからドラスティックに変えることは無理があるでしょう。
ならば、「高級」にこだわらず、クーポン利用やセットメニューを絡めて「価格的なお得感」を打ち出す施策は避けて通れないと言えます。
その結果、1店舗あたりの収益性が下降するでしょうが、原材料や製造プロセスを見直し、商品のクオリティーを下げないで収益性のマイナスをできるかぎり吸収する努力も不可欠となります。
また、商品開発に取り組むなら「美味しいから高くて当然」という発想だけでなく、「美味しいのにお値打ち感がある商品」の開発がモスバーガーに求められています。
他にも言いたいことは多々ありますが、現状を打破するには、世間が「今までのモスバーガーではない」と実感できるような大胆な取り組みが必要なことは間違いありません。
加盟こそ見送りましたが、ユーザーとして私は今でもモスバーガーの商品は好きです。
古き良き伝統を全て捨てされとは申しませんが、現在の延長性にモスバーガーの明るい未来はないとの覚悟で、オーナーと一丸となり、この難局を乗り切って欲しいと願ってやみません。
コンサルタントの視点
モスバーガー不振の原因について語ります
モスバーガーはメディアなどから「業績不振」と指摘されて久しい状況となっており、本ブログでもモスバーガーの分煙判断を厳しく指摘致しました。
しかしながら、モスバーガーの業績不振は決して分煙だけが原因ではありません。
では他にどんな原因があるかですが、メディアの記事をなぞっても意味がありませんので、FCコンサルタントとして、主に「フランチャイズビジネス」という側面から原因やその処方箋を探って参ります。
目 次
モスバーガー不振の原因は「オーナーの高齢化」ではなく呪縛と閉鎖性
モスバーガーが業績不振の原因となった理由として、分煙以外で多くのメディアが指摘しているのが「オーナーの高齢化」です。
モスバーガーは、FCオーナー自ら店長として運営するスタイルが主流となっています。
そのため、店長の高齢化は店の生産性や活気の衰退に繋がり、業績不振を招いたという説明ですが、この説明は「結果の説明」としては正しいです。
が、「原因の説明」にはなっていません。
モスバーガーより業歴が長いフランチャイズチェーンは多数あります。
オーナーの高齢化問題が避けて通れない問題なら、モスバーガーより業歴が長いFCはすべて同じ問題に直面するはずです。
つまり、オーナーの高齢化は不振の原因ではなく、オーナーの高齢化に対し具体的な対策を講じなかった(あるいは講じられなかった)フランチャイザー側の対応に、原因を求める必要があります。
ではモスバーガーがなぜ高齢化に対して具体的な対策を講じられなかったかですが、一言で言えば「呪縛と閉鎖性」です。
実はモスバーガーは、私自身にとって、加盟先の一候補でした。
しかし、モスバーガーは創業者の故櫻井氏があまりに天才的な経営者だったため、フランチャイズ加盟について、良くも悪くも先代のスタイルが継承されていました。
良い部分は守ってしかるべきです。
しかし、一加盟候補者として、当時の私の目にモスバーガーは大変申し上げにくいですが
「櫻井氏の指針やスタイルにこだわるあまり、革新やチャレンジすることを放棄し、守りだけに入ってしまっているフランチャイズチェーン」
と映りました。
また、良く言えば櫻井氏の代から頑張っているオーナーを大切にしていました。
が、新規参入を検討している個人や中小企業にとって、一種の参入障壁のようになっていると強く感じました。
モスバーガーにまだ信頼性やブランド力がない頃、リスクを背負って加盟してくれたオーナー達を大事にすることは、決して間違ってはいません。
しかしモスバーガーの場合は、「大事にする」を通り越し、一種の村社会のような閉鎖性を醸し出していたのです。
しかしながら、こうしたことは外部から客観的に見ないと気付きにくいことだったかも知れません。
当時私は、こうした見解を率直にモスバーガー側へぶつけました。
が、表面的には紳士的な態度ながら
「モスバーガーの経営のことを何もわかっていない若造が偉そうに」
といった雰囲気が伝わってきましたので、加盟先の候補から外した・・・というのが当時の経緯です。
つまりモスバーガーはかなり前から、こうなることが十分予見できる状況だった訳です。
二等立地+カジュアルで高級店というアンバランスなコンセプト
モスバーガーの不振要因は、分煙や高齢化以外にもいくつか要因がありますが、特に大きな要因としてあげられるのが
「二等立地重視の出店戦略+食器なしで食べるカジュアルなスタイル、なのに(価格は)高級志向」
というアンバランスな店舗コンセプトです。
モスバーガーはマクドナルドとの差別化をはかる狙いもあって、繁華街のど真ん中や駅前の一等立地より、そこから少し歩く二等立地を中心とした出店戦略に取り組んできました。
二等立地にも高級店は存在しますが、二等立地は高級店が主軸となる出店エリアではありません。
一等立地より住宅エリアに近付くことになりますので、着替えずに軽装で利用できる、つまりカジュアルな店が好まれる傾向があります。
また、モスバーガーの店の作りや接客スタイルは、マクドナルドやロッテリアとほとんど変わりません。
少なくとも高級レストランのようにテーブルに着席し、箸やフォーク、ナイフを使って料理を楽しむといったコンセプトではないですよね。
そのため、いくら声高に
「ファーストフードではない。高級な飲食店だ」
と訴えても、一般ユーザーにはマクドナルドやロッテリアと同様にしか映らないのです。
それだけにモスバーガーの商品価格は、ユーザー側に必要以上に割高感を与えていた訳です。
そこに追い打ちをかけるように、シェイクシャックなど、本場米国から高級ハンバーガーブランドが出店したことで、高級ハンバーガーと国内のファストフードとしてのハンバーガーで市場的な棲み分けが確立してきました。
その結果、市場的に更に中途半端な立ち位置に追いやられたことも、モスバーガーの業績不振を招いている大きな要因になっていると見られます。
大体なオーナーの刷新と価格戦略の見直しが必要
モスバーガーの業績不振の要因を二点ご紹介しましたが、ではどうすればこれらの問題が解決するか、それぞれ私なりの対策をご紹介したいと思います。
まずオーナーの高齢化問題は、FCチェーン店の新陳代謝を図る以外、解決の術はありません。
そのためには「既存店オーナーファースト」ではなく、「新規参入オーナーファースト」へと180度方針を転換させる必要があります。
資金力は乏しいが、意欲のある若い方々に加盟してもらえるよう、櫻井イズムは封印し、資金面でのハードルを下げて加盟しやすい制度を早急に整えるべきです。
また高齢となったオーナーが店舗を手放す際、資金力や実力のあるオーナーにチェンジしてもらう手法は経営的安心感が高いことは理解できますが、この点にもメスを入れる必要があります。
既存店はオーナーチェンジではなく、新規参入を目指している方々へ優先的に譲渡すべき案を私なら提言します。
売上が安定している既存の優良店を引き継いで運営をスタートできるとなれば、資金だけでなく、経験という点で不安を抱えている若手オーナーが勇気を持って手を上げてくれるきっかけに必ずなるからです。
もちろん、新米オーナーには運営経験がない訳ですから、譲渡したために店舗のQSCが低下し、売上が下降するリスクは当然増えます。
そうならないよう、新米オーナーのスキルを高める指導方法やシステムを開発することが本部の仕事であり、課題でもあるのです。
次に価格に関する問題ですが、すでに二等立地へ多数の出店している以上、出店レベルからドラスティックに変えることは無理があるでしょう。
ならば、「高級」にこだわらず、クーポン利用やセットメニューを絡めて「価格的なお得感」を打ち出す施策は避けて通れないと言えます。
その結果、1店舗あたりの収益性が下降するでしょうが、原材料や製造プロセスを見直し、商品のクオリティーを下げないで収益性のマイナスをできるかぎり吸収する努力も不可欠となります。
また、商品開発に取り組むなら「美味しいから高くて当然」という発想だけでなく、「美味しいのにお値打ち感がある商品」の開発がモスバーガーに求められています。
他にも言いたいことは多々ありますが、現状を打破するには、世間が「今までのモスバーガーではない」と実感できるような大胆な取り組みが必要なことは間違いありません。
加盟こそ見送りましたが、ユーザーとして私は今でもモスバーガーの商品は好きです。
古き良き伝統を全て捨てされとは申しませんが、現在の延長性にモスバーガーの明るい未来はないとの覚悟で、オーナーと一丸となり、この難局を乗り切って欲しいと願ってやみません。
-コンサルタントの視点
-モスバーガー, 不振, 原因
執筆者:フランチャイズという選択
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