本記事では、フランチャイズ契約を締結する場合の要となる契約書のチェックポイントについて、ご紹介致します。
・・と申しましても、一般的なチェックポイントであればネット上で拾えるかと思われます。
今回は私なりの視点で、特にアドバイスを心掛けている点を中心にお伝えして参ります。
目 次
契約書は事前開示+事前説明を受けることが常識!
まず契約書の中身のチェックポイントの前に、契約書を確認するタイミングや方法からすでに重要なポイントがあります。
契約書の確認は、契約の意思表示をした後ではなく、検討段階で必ず確認することが大切です。
これはチェックポイントと言うより、「中小小売商業振興法及び施行規則」で定められた「法定開示」の項目のひとつだからです。
仮にフランチャイザー側が
「契約の意志を確認できない限り、契約書の開示は行えない」
と言っても、そのような言い分は通りません。
遠慮なく、堂々と開示を要求してください。
ただし法定開示は、契約するかどうかはともかく、加盟希望者が対象であることは前提です。
また、契約条件がむやみに流出することはチェーン店にとって好ましくない状況が生じます。
そのため、法定開示にあたっては例えば守秘義務契約を事前締結したり、就職ではありませんがエントリーシートの作成、身分証明できる書類の提出を求められたりする場合はあります。
中にはただ契約書を見せるだけの横着なフランチャイザーがいますが、これはダメです。
契約文を全て読みながら説明を受けることは、必須だとお考えください。
それを拒むようであれば、加盟を見送ることをオススメ致します。
契約書は文章量が多いため、ただ目で追うだけではポイントや重要事項がなかなか掴めません。
声に出して読んでもらい、必要に応じて補足説明を受けることが、視覚、聴覚両方からの情報となるため、契約内容に対する理解が大いに深まります。
ペナルティー要件
契約書は情報量が多いですが、すべてが重要という訳ではありません。
おさえるべき、重要なチェックポイントがあります。
その点を重点的にチェックすることが大切であり、合理的でもあります。
ではどんなチェックがポイントがあるかですが、そのひとつが「ペナルティ要件」です。
フランチャイジー側がどんな条件に当てはまった場合、あるいは当てはまらなかった場合に、どのようなペナルティが課せられるかは、加盟者側の不利益に直結します。
例えば昨今のコンビニ問題で話題になっていますが、約束した営業時間に従わなかった場合にはどうなるか等です。
そもそもペナルティが生じるのか、
生じるとしたらどんなペナルティなのか、
こうした問題意識をもって契約書に目を通せば、「この条件は呑める、呑めいない」といった判断も行いやすくなります。
テリトリー条項と添付地図
チェックポイントとしてこれも重要なのが、テリトリーに関する条項です。
テリトリーは独占的に与えられるエリアか、テリトリー内には(契約期間中並びに契約更新後も)同じチェーン店は”直営店も含めて”(これ大事!)出店しないことが、条文に明記されているかは必ず確認してください。
この点が曖昧だと、特に直営店の出店をめぐり、後々トラブルとなる可能性が排除できないからです。
ただ、アーリーステージのフランチャイザーの場合、単に条文が不足しているだけの場合がよくあります。
そのような場合は、特記事項として契約条件に含めることを要望してください。
また、これは事前の情報開示の段階では確認しにくい事項であるからこそ、事前確認が大切なのですが
「テリトリーエリアを明示した地図を契約締結時に提供してもらえるか」
も必ず確認するようにしてください。
テリトリー区分は、行政によって定められた地名区分どおりにならないことが多くなります。(例えば道路を基準にする等)
そのため、文章だけでは認識に誤差や誤解が生じやすくなるからです。
原則として国土地理院作成の地理院地図をもとに、テリトリーエリアの地図上での区分図を受け取ることが重要です。
万一そうした用意がないフランチャイザーには、提供を要望してください。
経営譲渡や途中解除
フランチャイズ契約は入り口だけでなく、「出口」や「途中降板」時の確認も重要なチェックポイントです。
特に個人の場合、自身が病気になったり、事故にあって仕事を続けたくとも続けられなくなったりする場合があります。
また、最悪のケースとしては経営が上手くゆかず、やむを得ず店舗を手放さければならなくなることも考えられます。
このような深刻な状況に陥った場合、ただ機械的に契約期間中の契約解除は違反だ、罰金だとの条件しかないのであれば、法人はともかく、個人の方は安心して加盟できませんよね。
それだけに、やむなく経営継続が困難となった場合の店舗経営権の譲渡や、譲渡に伴う契約の途中解除が可能かどうかは、加盟を判断する上で決して見逃せない条件と言えるのです。
ただし
「”やむなく経営継続が困難となった場合”とは、具体的にどこからどこまでを指すのか」
等、具体的なことについては「別途協議の上」となっている場合もあります。
このような場合には、事前にフランチャイザー側へどのようなケースが認められるのか具体例を事前に尋ねておくことや、出来る限りそれらを明文化して契約書に追加してもらえるかも、確認しておいた方が良いでしょう。
契約更新要件
契約更新要件も、実は重要なチェックポイントです。
契約期間を満了し、引き続きFC店舗を継続運営したいと考えても
「これこれの基準を満たさない場合は契約を更新できない」
との条件があり、その基準が達成困難な内容であれば、契約が更新できなくなります。
フランチャイザーとしては、通常であれば同じオーナーに継続的に運営してもらいたいと考えます。
達成困難な大きなハードルを設けているケースはまずありません。
ただ、戦略的にFC店舗のスクラップ&ビルドを行いたいと考えているFCや、質が高いFCオーナーのみ残したいと考えているフランチャイザーなら、結構なハードルを課している場合もあります。
何れにせよ、いざ更新となった場合に困らないよう、更新要件も事前にしっかりと把握しておくことが大切です。
経営指導やサポート内容
経営指導やサポート内容についても、契約書で確認しておくべき重要ポイントです。
本部側は
「十分に経営指導している」
と訴え、一方FCオーナーからは
「本部の指導は不十分だ」
との不満を聞かされるケースが少なくありません。
こうした認識の違いが生じる理由のひとつとして、契約書上で経営指導やサポートに対する「結果責任」を明示することが困難であり、殆どの場合、「遂行責任」に留まるからです。
つまり本部側は
「遂行責任を果たしているかどうか」
が基準となり、FCオーナー側は
「経営改善に結びつく結果が出ているかどうか」
が基準となってしまいがちなので、こうした行き違いが生じてしまう訳です。
この点はどちらが正しいかですが、フランチャイザーの肩を持つ訳ではありませんが
「契約書に記載されている指導上の責任は、一般的には遂行責任にとどまること」
はどうか理解しておいてください。
つまり契約書の文言だけで、曖昧になりがちな結果まで求めるのは契約として適切とは言えないからです。
相互に解釈において疑義を招かない「遂行責任」での締結が、やはり最も優先される事項と言えます。
例えば契約書上で「必ず毎月1回は臨店指導を行う」と数量的な記載があれば、指導の中身や品質はともかく、毎月1回は臨店指導があることだけは契約事項として認識できる訳です。
それが数ヶ月に一度しか臨店指導が行われていないとなれば、誰が見ても明らかな契約違反となります。
では指導の品質や結果についてはどう考えれば良いかですが、指導を行うスーパーバイザーと面談したり、加盟しているオーナーなどから話を聞いたりして、契約書以外で品質や実力を見極めてゆく必要があります。
だからこそ、契約締結前の調査や情報収集などがとても大切になってくるのです。