つい最近「「業務委託」と「フランチャイズ」はどう違うのですか」という質問を加盟検討者の方から頂戴しました。
確かに似ている領域があるように思われますが、両者は全く別物です。
そこで今回は両用語に対する理解を深めて頂くため、「業務委託」の用語解説と共にフランチャイズとの違いについて解説致します。
目 次
業務委託とは
業務委託とフランチャイズの違いを理解するためには、業務委託という言葉の定義を正しく理解することが先決なのでその定義からご紹介しましょう。
「業務委託」という言葉は「委託」という部分に着目すれば理解しやすくなります。
「委託」とは「自分が行う取組みを他者へ託すこと(委ねること)」です。
他者へ託す取組みが「業務」の場合に「業務委託」となる訳ですね。
では「業務」とは何かですが、「業務」とは「(主に事業や商売のために)継続的に行う仕事」と言えます。
これらをまとめますと業務委託の意味は次のように整理できます。
業務委託とは
「企業などが事業のために継続的に行っている仕事の一部を他者へ託すこと」
となります。
業務委託は対価を「得る」ことが条件
「託すこと」は「外注すること」と言い換えることもできます。
社会奉仕的な業務を除けば、業務をタダで引き受けてくれる個人や組織は通常いませんよね。
そこには「業務委託費」という対価が発生します。
この点がフランチャイズと業務委託の違いを理解する場合の鍵となります。
例えば東京に5店舗、大阪に5店舗、計10店舗の小売店を運営しているA社という企業があったとします。
A社は大阪5店舗の運営については、大阪にあるB社へ「業務委託」することにしたとします。
この場合、B社がA社に代わって大阪の5店舗を運営しても「フランチャイズ」ということにはなりません。
業務委託ですから、B社はA社から対価をもらうことを条件に運営を任された立場です。
A社から業務委託料として例えば店舗売上のX%だとか、固定報酬として○十万円だとかといった報酬を受け取ることになります(※)。
ましてB社がA社へ加盟料を支払うこともなければ、ロイヤルティーを支払うこともありません。
(※補足:業務委託の報酬形態について)
業務委託の報酬形態について質問を頂きましたので、補足させて頂きます。
まず報酬名称が必ず「業務委託料」となる訳ではなく、独自の名称が使用されている場合が多く見られます。
例えばハウスクリーニング事業なら、業務委託者より紹介を受けた顧客先でハウスクリーニングを行った場合、業務委託料ではなく「クリーニング料」だとか「顧客サービス料」などの名目で報酬が支払われるといった場合です。
また、このハウスクリーニング事業の報酬形態は「完全成功報酬」とは言えませんが「従量制」の報酬形態と言えます。
そのため、実際に仕事を遂行しなければ報酬はゼロとなります。
この「従量制」の報酬形態が過度に強調されたケースと言えるのが、不動産営業などで見られるフルコミッション制を前提とした「業務委託契約」です。
ロイヤルティー等を収める必要はないものの、契約を取れない限り、単に営業活動を遂行しただけでは業務委託料は受け取れません。
こうした完全成功報酬を前提とした報酬形態は本来の業務委託の主旨からは逸脱しており、「業務委託契約」という表現は適切だとは言えませんね。
では、こうした完全成功報酬の形態は、「業務委託」ではなくどんな言葉が適切かと言えばズバリ「代理店」です。
つまり本来なら「代理店契約」と言った方が良いのに、代理店という印象を和らげたいのか「業務委託契約」との言葉を利用しているケースが結構見られるのです。
理解するのに少々厄介な話ですが、読者の皆様はこの点に留意し、ほんとうの意味での業務委託か、実質的には代理店かを分けて考える必要があるということです。
■業務委託とフランチャイズでは責任の範囲も異なる
業務委託の場合、B社が負う責任とは基本的に
「業務を誠実に、正確に遂行する責任」
です。
例えば最低限これだけの売上は下回らないようにするといった、一定の成果が求められる場合も契約次第ではあり得るかも知れません。
が、業務委託である限り、責任の範囲は業務を委託された範囲に留まり、最終的な経営リスクや責任まで負うことはないのです。
また、店舗運営委託の場合、店舗の所有者は委託したA社のままです。
仮にB社が業務委託を受けていた期間中に地震が発生し店舗が倒壊したとしても、それに伴う損失や補修費用をB社が求められることはありません。
A社が所有者として解決しなければならない問題です。
まとめ
では業務を委託される側、並びにフランチャイズへ加盟する側の立場から業務委託とフランチャイズの定義や違いをまとめてみることにしましょう。
■業務委託とは
・業務委託とは仕事として業務の実行を依頼されること。
・委託する側から対価として委託料報酬を受け取ることができる上、加盟金やロイヤルティを支払うことはない。
・業務委託の責任は主に業務の”遂行責任”であり、経営的リスクや経営の”結果責任”までは通常負わない。
・本来は「代理店」なのに、「業務委託」と呼称されているケースが多々あるため注意が必要。
■フランチャイズとは
フランチャイズとは、フランチャイザーの傘下企業として加盟し、フランチャイザーから経営ノウハウを有償で提供してもらい、自らの責任においてその経営ノウハウに則って事業を行うこと。
フランチャイザーの商標などを利用する対価や、経営ノウハウの提供や指導を受ける対価として加盟金やロイヤルティを加盟者側が支払うことになる。
加盟者はフランチャイザーが定めた業務手順などを、マニュアルに従って忠実に遂行する責任があるが、問われるのは遂行責任だけではない。
加盟者は経営的に独立したフランチャイズオーナーという立場になるため、経営的なリスクや結果責任を全て負う必要がある。
以上が業務委託とフランチャイズの違いです。
両者の違いが不明だった方の参考になれば幸いです。