コンビニオーナー苦しめるドミナント戦略という害悪
コンビニFCオーナーを苦しめる24時間営業問題について、当ブログでも取り上げましたが、オーナーを苦しめているのは24時間営業だけではありません。
ドミナント方式による出店戦略も、オーナーにとって生活基盤を脅かすだけの害悪でしかなくなってきています。
ところが、程度の違いこそありますが、コンビニ本部はこのドミナント戦略を手放そうとはしません。
この点は多少主観混じりですが、コンビニ業界の王者で、悲しいことにFC業界の王者でもあるセブンイレブンが、大手三社の中で特にドミナント戦略へのこだわりが強いと感じています。
セブンイレブンは、たしか「加盟店ファースト」を標榜していたはずですが・・
ドミナント戦略は、今や加盟店を殺し、本部だけを栄えさせる「本部ファースト」の象徴のように見られていることに、悲しいかな、まだ気付けていないようです。
(あるいは気付いているのに、気付かないふりをしているだけかも知れませんが。)
ではなぜコンビニ本部はどうしてそこまでドミナント戦略にこだわり、またなぜドミナント戦略はコンビニFCオーナーを苦しめることになるのでしょうか。
私なりのコンビニのドミナント戦略に対する所見を述べたいと思います。
ドミナント戦略による成功体験と数字による呪縛
コンビニ本部がドミナント戦略を見直さないどころか、今尚こだわり、強硬に推し進めようとしている一番の理由は、ドミナント戦略で成功を収めてきた強烈な成功体験だと思われます。
具体的にはドミナント戦略推進によりコスト比率が削減され、売上が上がる数字上の魔力が、コンビニ本部をドミナント戦略に囚われてしまったと私は見ています。
セブンをはじめとした大手コンビニ三社が、ドミナント戦略で快進撃を続けてきたのは確かに事実です。
また、ドミナント戦略自体が悪だとは、実はこれっぽっちも思っていません。
ドミナント戦略は、”企業によって適切な運用をされている限り”、大変有効な戦略なひとつだと評価しています。
特定地域に出店すれば商材の配送やスーパーバイザーの巡回効率が高まるので、店舗数と売上に対する本部側のコスト比率は、そりゃあ縮減するでしょう。
また、出店地域での知名度や店舗ブランド、特にオリジナル商品に対する認知度向上も期待できます。
ひとつしか店舗がない場合には難しい、ローカルエリア限定での広告宣伝活動などもそのエリア内に一定の店舗数があれば取り組みやすくなるし、効果も期待できるようになります。
その結果として、ドミナント地域に選ばれたエリア内店舗の売上増も実現できていたと思われます。
そうした数字だけを見ていれば、
「数字が証明しているから、俺たちがやっていることは正しいんだ」
となってしまうのも、ある意味、仕方がないことかも知れません。
ドミナント戦略はオーナーの生活を脅かしている
日本はご承知のとおり、少子化による人口減少が抗えない既定路線となりつつあります。
政府が世論の反対を押し切って入管法を改正(”改悪”と揶揄されていますが)したのも、減少する労働人口を補うためです。
ドミナント戦略は人口が長期的に見込める地域なら、確かに効果的な戦略です。
しかし、長期的には人口減へと進んでいる日本において、今後の人口増が永続的に見込めるエリアなどひとつもありません。
つまり、ドミナント戦略は出店エリア内で顧客を奪い合う、パイ取り合戦の状況になっており、それは競合するコンビニ同士だけでなく、すでに同じブランドのコンビニ同士の競争へと完全に波及してしまっています。
一昔前であれば、一時的に同じブランドのコンビニ店同士が客を奪い合うことで売上が落ちても、その地域の人口が増えたり、ドミナント戦略で音を上げた競合ブランドのコンビニが撤退したりすれば、同ブランド店同士の競合が緩和されたケースはあったでしょう。
しかし、首都圏ですら今や人口減少に歯止めが利かない地域が出始めている状況です。
つまりパイ自体が縮小傾向にあるのですから、競合他店が撤退しても、同じブランドのコンビニが近隣がいくつもあれば、簡単に売上など回復はしません。
また、問題は売上だけに留まりません。
近隣にコンビニが増加すれば、アルバイトスタッフも近隣同士で奪い合うことになります。
コンビニは時給の割にハードワークとなることから人気がなく、ドミナントの影響が少ないエリアでも求人になかなか応募がない状況が常態化してしまっています。
そのような中、コンビニの数だけで増えてしまえば、人手不足が更に深刻化してしまうことは誰でも理解できる話です。
つまり、人手不足の問題は、24時間営業だけでなく、過剰なドミナント戦略によっても引き起こされている問題なのです。
「加盟店ファースト」と声高に叫ぶなら、加盟店を現在最も苦しめている人手不足の解消や、日販減少に歯止めを打つべく、ドミナント戦略による出店の見直しは避けて通れないと断言させて頂きます。
出店ではなく、各店舗のオーナーやアルバイトスタッフが活き活きと店舗で活躍できる環境を整えることで、店舗としての活力や魅力をアップさせることで売上増を追求していくことが、コンビニに求められていることだと指摘させておいて頂きます。
コンサルタントの視点
ドミナント戦略の限界に気付けない哀れなコンビニ本部
目 次
コンビニオーナー苦しめるドミナント戦略という害悪
コンビニFCオーナーを苦しめる24時間営業問題について、当ブログでも取り上げましたが、オーナーを苦しめているのは24時間営業だけではありません。
ドミナント方式による出店戦略も、オーナーにとって生活基盤を脅かすだけの害悪でしかなくなってきています。
ところが、程度の違いこそありますが、コンビニ本部はこのドミナント戦略を手放そうとはしません。
この点は多少主観混じりですが、コンビニ業界の王者で、悲しいことにFC業界の王者でもあるセブンイレブンが、大手三社の中で特にドミナント戦略へのこだわりが強いと感じています。
セブンイレブンは、たしか「加盟店ファースト」を標榜していたはずですが・・
ドミナント戦略は、今や加盟店を殺し、本部だけを栄えさせる「本部ファースト」の象徴のように見られていることに、悲しいかな、まだ気付けていないようです。
(あるいは気付いているのに、気付かないふりをしているだけかも知れませんが。)
ではなぜコンビニ本部はどうしてそこまでドミナント戦略にこだわり、またなぜドミナント戦略はコンビニFCオーナーを苦しめることになるのでしょうか。
私なりのコンビニのドミナント戦略に対する所見を述べたいと思います。
ドミナント戦略による成功体験と数字による呪縛
コンビニ本部がドミナント戦略を見直さないどころか、今尚こだわり、強硬に推し進めようとしている一番の理由は、ドミナント戦略で成功を収めてきた強烈な成功体験だと思われます。
具体的にはドミナント戦略推進によりコスト比率が削減され、売上が上がる数字上の魔力が、コンビニ本部をドミナント戦略に囚われてしまったと私は見ています。
セブンをはじめとした大手コンビニ三社が、ドミナント戦略で快進撃を続けてきたのは確かに事実です。
また、ドミナント戦略自体が悪だとは、実はこれっぽっちも思っていません。
ドミナント戦略は、”企業によって適切な運用をされている限り”、大変有効な戦略なひとつだと評価しています。
特定地域に出店すれば商材の配送やスーパーバイザーの巡回効率が高まるので、店舗数と売上に対する本部側のコスト比率は、そりゃあ縮減するでしょう。
また、出店地域での知名度や店舗ブランド、特にオリジナル商品に対する認知度向上も期待できます。
ひとつしか店舗がない場合には難しい、ローカルエリア限定での広告宣伝活動などもそのエリア内に一定の店舗数があれば取り組みやすくなるし、効果も期待できるようになります。
その結果として、ドミナント地域に選ばれたエリア内店舗の売上増も実現できていたと思われます。
そうした数字だけを見ていれば、
「数字が証明しているから、俺たちがやっていることは正しいんだ」
となってしまうのも、ある意味、仕方がないことかも知れません。
ドミナント戦略はオーナーの生活を脅かしている
日本はご承知のとおり、少子化による人口減少が抗えない既定路線となりつつあります。
政府が世論の反対を押し切って入管法を改正(”改悪”と揶揄されていますが)したのも、減少する労働人口を補うためです。
ドミナント戦略は人口が長期的に見込める地域なら、確かに効果的な戦略です。
しかし、長期的には人口減へと進んでいる日本において、今後の人口増が永続的に見込めるエリアなどひとつもありません。
つまり、ドミナント戦略は出店エリア内で顧客を奪い合う、パイ取り合戦の状況になっており、それは競合するコンビニ同士だけでなく、すでに同じブランドのコンビニ同士の競争へと完全に波及してしまっています。
一昔前であれば、一時的に同じブランドのコンビニ店同士が客を奪い合うことで売上が落ちても、その地域の人口が増えたり、ドミナント戦略で音を上げた競合ブランドのコンビニが撤退したりすれば、同ブランド店同士の競合が緩和されたケースはあったでしょう。
しかし、首都圏ですら今や人口減少に歯止めが利かない地域が出始めている状況です。
つまりパイ自体が縮小傾向にあるのですから、競合他店が撤退しても、同じブランドのコンビニが近隣がいくつもあれば、簡単に売上など回復はしません。
また、問題は売上だけに留まりません。
近隣にコンビニが増加すれば、アルバイトスタッフも近隣同士で奪い合うことになります。
コンビニは時給の割にハードワークとなることから人気がなく、ドミナントの影響が少ないエリアでも求人になかなか応募がない状況が常態化してしまっています。
そのような中、コンビニの数だけで増えてしまえば、人手不足が更に深刻化してしまうことは誰でも理解できる話です。
つまり、人手不足の問題は、24時間営業だけでなく、過剰なドミナント戦略によっても引き起こされている問題なのです。
「加盟店ファースト」と声高に叫ぶなら、加盟店を現在最も苦しめている人手不足の解消や、日販減少に歯止めを打つべく、ドミナント戦略による出店の見直しは避けて通れないと断言させて頂きます。
出店ではなく、各店舗のオーナーやアルバイトスタッフが活き活きと店舗で活躍できる環境を整えることで、店舗としての活力や魅力をアップさせることで売上増を追求していくことが、コンビニに求められていることだと指摘させておいて頂きます。
-コンサルタントの視点
-コンビニ, ドミナント, 限界
執筆者:フランチャイズという選択
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