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24時間営業は絶対続けるべき+加盟店ファーストと言っていたセブンイレブン
ようやく・・・コンビニ業界トップであり、同時に日本最大のフランチャイズチェーン企業と言って良いセブンイレブンが時短に向けた「検討(実験)」に入りました。
「なんでこんなに時間がかかったのか!」
との思いもありますが、業界トップ企業が、本当にようやく「まともな判断」を下したことは歓迎します。
このセブンイレブンの24時間営業の見直しに伴い、多くのメディアが皮肉交じりに指摘している事項があります。
セブンイレブン社長の古屋氏がかなり前になりますが、2017年の日経ビジネスでのインタビューで発していた言葉です。
「24時間営業を絶対に続けるべき」
がその台詞ですが、私も当該記事でこの台詞を読んだ時、誠に残念でなりませんでした。
余談となりますが、日本語の「絶対に」という副詞は、責任ある立場の人物こそ、慎重に選んで使用しなければならない言葉です。
ただ私は、記事の中でその台詞以上に憤怒した言葉があります。
「私の経営手法は「加盟店ファースト」」
という台詞です。
当時、コーヒーを飲みながらこの記事を読んでいましたが、上述の台詞を読んだ時、怒りのあまり、コーヒーカップがグラグラ揺れ、こぼれ出たコーヒーが手にかかり、熱さからコーヒーカップを落としてしまったことを今でも覚えています。
きっと加盟している多くのオーナーも同様な思いを抱いたと思われますが、当時も今もセブンイレブンの経営手法は(自覚の有無はともかく)
「フランチャイザー本部ファースト」
に陥っていると断定しておきます。
コンビニの人材不足問題は24時間営業開始以来の構造的問題
コンビニ業界のオーナーは人材の確保、とりわけ深夜時間帯の人材確保に、2017年どころかそのずっと前から、苦しんでいました。
コンビニ業界が24時間営業に全面的に切り替えて以降、ずっと苦しんできたと言っても良いです。
ロイヤルティーのわずかな見直しだとか、シルバー人材のリクルート作戦など、セブンイレブンが全く手を打ってこなかったとまでは言いません。
しかし、人材確保の問題はごく一部の限られた店舗で生じている例外的な問題ではなく、24時間営業にこだわったために、業界自体が抱えてしまった構造的な問題となっていことは明らかです。
加盟店ファーストと言うなら、構造的問題を解決すべく、抜本的な経営システムの見直しが必要だったはずです。
私は
フランチャイズオーナーを募集したければオーナーの休日を考えよ!
という記事をブログにあげています。
気付かれた方も多いかと存じますが、この記事には「コンビニ」という文字は登場しませんが、コンビニ業界のフランチャイザー企業を主な対象として書いたものです。
古屋社長の言葉を借りれば、セブンイレブンに限らず、コンビニ業界ほど「加盟店ファースト」を軽視している業界はありません。
しかも悲しいことに、加盟店ファーストを最も軽視しているコンビニ業界が、フランチャイズチェーン業界全体の牽引業種になっています。
そのため、ここにメスが入らない限り、
「フランチャイズビジネスは本部だけが儲かるビジネスだ」
「フランチャイズはブラックだ」
等々の社会的な根強い不信感やマイナス評価は決して解消しないとの思いが、ずっとくすぶっていました。
それだけに、ここに来てようやく業界の巨人が
「”初めて”加盟店ファーストに目を向けようとしている」
ことは、フランチャイズチェーン業界全体の信頼回復の一歩にもなると期待しております。
時短は対策の一つに過ぎない。プラスαとして必要な施策とは
時間短縮の試みが始まったといっても、FC店舗ではなく、まだ直営店での実験段階です。
しかも「必ず時短する」との宣言がされた訳ではないので、時短が本当にFC加盟店にまで普及するかは予断を許しません。
では無事に全国のFC加盟店で時短が導入されれば、コンビニ問題は解消するのでしょうか。
時短によって、人材不足の問題やオーナー夫婦が満足に休息も取れない状況が緩和することは期待できますが、十分とは言えません。
仮に7時-23時の営業時間とした場合でも、早朝、夜間の時間帯の人材不足には相変わらず悩まされることになるでしょう。
そこで時短に加えて、あるいは時短に代わる、プラスアルファの施策が必要になります。
時短以外にどのようなことに取り組むべきかですが、私は経産省も推進しようとしている
「併用ではなく全面的なセルフレジ方式」
の導入と、更にその次のゴールとして位置付けられる
「店舗の完全無人化」
が不可欠との立場です。
まず、経産省が推進しようとしているセルフレジ方式は、すでに大手スーパーマーケットなどで部分的に導入されています。
しかしながら、全てセルフレジで決済が行えるスーパーは今の所、見当たりません。
(もしご存知の方があれば、情報を提供して頂けると助かります)
このままではコンビニも、スーパー同様「併用」に留まる可能性が濃厚です。
私は思い切って、決済についてはセルフレジ方式のみとして、店舗従業員には原則レジのオペレーションに関わらせないように持ってゆくべきだと考えています。
そうすれば、深夜だけでなく昼間の営業時間帯の人員数も減らせるため、人材不足問題の解消が更に前進します。
日本は、来日外国人観光客が驚くほど自販機の文化が、日本全国に幅広く根付いている訳です。
つまり世界的に見て、日本こそセルフレジ方式が浸透しやすい土壌がある国はないと言っても過言ではありません。
ところが「24鮮」の登場等、コンビニのセルフレジ方式では中国に遅れを取っていることが残念でなりません。
【画像引用:https://kknews.cc/tech/ea89kr4.html】
完全無人コンビニは課題もあるが・・・やはり推進すべき
人材不足問題を解決するには、セルフレジ方式だけでもまだ不十分です。
人材不足問題を根本的に解決するには、コンビニは完全無人化を目指す必要があると考えています。
ただ、中国の完全無人コンビニは一進一退といった状況で、必ずしも大成功しているとは言えないようですね。
要因は様々考えられますが、一言で言えば、有人店舗と比較した場合、例えば現金での決済ができない等、利便性や安心感という点でまだまだ課題があるからです。
そうした課題は、日本で無人コンビニを普及させる上でも、当然解決する必要があります。
それらの課題解決は決して容易ではないでしょうし、時間もかかるでしょう。
しかし、それらの課題が解決され、有人店舗より無人店舗は
「早い、便利、買い物しやすい」
更には
「困らない、迷わない」
といった評価が確立すれば、セルフのガソリンスタンドのように社会的に定着し、拡大してゆくと考えられます。
ガソリンスタンドもそうでしたが、セルフが解禁された1998年当初はドライバーの不安感から、セルフのレーンが空いていても、有人サービスレーンの方に並ぶという光景がしばらく見られました。
ところが現在はご承知の通り、地域での違いはまだ多少あるものの、状況はほぼ一変。
急いでいるドライバーでなければ、有人が空いていても、安価なセルフレーンの空きを待つのが当たり前の光景となりました。
こうしたガソリンスタンドの事例からもわかるとおり、コンビニも、いきなり完全無人化にするとユーザーの不安を招くでしょう。
従って、完全無人化で運営できるシステムは整えた上で、あえて店舗従業員を配置するなど、ソフトランディングさせる策などが必要にはなると思われます。
何れにせよ、国はセルフレジや店舗無人化に向けて業界を導こうとしている事実があります。
また、火災や接触事故などの危険が伴い、コンビニよりかなりハードルが高かったはずのガソリンスタンドで、夜間などは完全無人化が実現できている実例が既に存在している訳です。
コンビニでの完全無人化は国と業界が手を組んで真摯に取り組めば、早期に実現させることも決して不可能ではありません。
コンビニオーナーが直面している人材不足問題は、もはや現場の自助努力だけでは解決困難です。
業界が抱えてしまった構造的な問題と言えます。
構造的な問題を解決するには、それこそ「構造改革」と言えるような、抜本的な経営システムの改革が必要になります。
コンビニ業界には時代を切り開く勇気と、チャレンジ精神が問われていることを明言させておいて頂きます。