定食分野で今やあの大戸屋を抜き去り、トップに躍り出たFCといえばプレナス社の「やよい軒」ですが、やよい軒のごはんおかわり有料化が物議を醸しています。
正確には、ごはんのおかわり有料化が問題になったのではありません。
「有料化する理由」が炎上を招く要因となりました。
その理由とは「顧客への配慮」だったのですが、顧客へ配慮したはずのやよい軒(”プレナス社の対応”と言うべきところですが、わかりやすさを重視し、以後「やよい軒」とします)はなぜ顧客や世間から批判を浴びてしまったのか。
私なりの考察を本記事で紹介します。
批判を招いた理由には3つの要因が潜んでいる
やよい軒が2019年4月より、一部店舗ながら実験的にごはんおかわりの有料化に踏み切りましたが、冒頭でお伝えしたとおり、有料化そのものが批判を浴びた訳ではありません。
やよい軒が有料化に踏み切った理由ですが、同社は
「一部の顧客から、ごはんをおかわりしていないのに料金が同じなのは不公平との意見があり、その意見に配慮した」
といった内容を有料化の理由として公表していました。
この理由が世間から反感を買ってしまった訳です。
この件について多くのメディアは
「「値上げを一部の顧客のせいにしている」との批判が殺到した」
といった伝え方をしています。
代表的な批判の声としては確かにそのとおりなのですが、この批判の裏側には、更に3つの要因が潜んでいます。
①:少数意見が本当に存在しているのかとの疑念
ひとつは
「一部であってもそのような声が本当にあるのか」
という強い疑念、納得感のなさを多くのユーザーが感じたことです。
「おかわり自由」というサービスは、別にやよい軒の専売特許ではありません。
飲食業界では比較的ポピュラーなサービスです。
おかわり自由はごはん以外にも、例えばサラダ、スープ、コーヒー、ラーメンの麺だとか様々なものがあります。
回転寿司店の「がり」や牛丼店の「紅しょうが」だって、立派な「おかわり自由」のサービスです。
ところが
「自分は紅しょうを食べてないのに、牛丼の値段が同じなのはけしからん」
といったクレームは、聞いたことがありません。
つまり、それほど珍しくもないサービスに、今更不公平だと難癖を付ける人が本当にいるのか、信じられないというのが、世間一般の見方です。
実際、批判の声には
「値上げをしたい本音を隠すための詭弁だ」
といった指摘もあり、やよい軒側の発表は信頼されていなかったことが伺えます。
仮にそうした批判が「事実」であっても、世間が理解、納得できる「情報」になっていなければ、問題化してしまうものです。
②:不公平解消が別の不公平を招いた
ふたつめは「不公平感を解消する」との狙いが、別の不公平を招いたこと。
この点はぜひフランチャイザー企業、FCオーナー共に真摯に耳を傾けて頂きたい点ですが、世間と言いますか、一般顧客の心理には
「自分と同じような不満を感じている人が少数派であれば、企業は耳を傾けてくれない」
との”あきらめ”の心理が、潜在的に刷り込まれていることを前提として、理解しておく必要があります。
企業側の対応が炎上するといった現象も、実はこうした顧客心理が背景にあると言われています。
「いつもは無視されるだけ」との諦めや不満が前提としてあるため、ネット上で自分と同様な不満の声を多数発見すると、それに乗じて追撃したくなるからです。
ところが今回のやよい軒の対応は、日頃は無視しているはずの「少数派の意見」を、なぜか突如採用した格好になってしまった訳ですね。
そのため世間から
「(いつも無視しているくせに)なぜその少数意見だけは取り上げたのか」
との強い不公平感を逆に与える結果ともなりました。
やよい軒としては
「少数の意見にもちゃんと耳を傾ける会社です」
との絶好のPRにもなるとの考えがあったかも知れませんが、であるなら日頃から少数意見に耳を傾け、こまめに対応すべきでした。
③:対応策は少数意見の不満解消にもなっていない
みっつめは、そうした不満を感じた一部の人々にとっても、不満解消にならなかったこと。
おかわりについて不公平だと感じている方の意見を翻訳すれば
「定食の料金にはおかわり自由の料金も含まれている。
その分まで、おかわりしない人が負担するのはおかしい。
おかわりしないのだから、その分安くしろ!」
となります。
要は、値上げや別料金にすることを求めたのではなく、「値下げ」が改善要望だった訳です。
にもかかわらず今回の対策はおかわりしない人にとっても料金が据え置かれた格好になったため、むしろ不満が募った可能性すらあります。
やよい軒に求められることとは
では今後やよい軒はどうすべきかですが、有料化”実験”は一旦5月末日に打ち切られたようですが、これで「終結」とはなりません。
もし有料化した理由が本当に「一部の顧客への配慮」であり、原材料費や人件費高騰といった経営的事情でないなら、有料化などそれこそ「時期未定」で見送るべきと考えます。
また、有料化の中止だけでなく、今回の批判に対する対応も求められます。
やよい軒としても、多々言い分はあるかも知れません。
が、世間の批判に対する反論や釈明など百害あって一利なしです。
敵対するような姿勢ではなく、批判の声に真摯に耳を傾け、その声に応えること、批判を浴びた事項については率直にお詫びすることも必要です。
果たしてそうした対応を、やよい軒が取り組めるかどうか。
こうした世間の批判を浴びた場面こそ、企業の真価が問われます。
FCオーナーを守らなければならないフランチャイザー企業としてどう振る舞うのか、やよい軒の今後の対応をじっくりと注視するつもりです。
コンサルタントの視点
やよい軒おかわり有料化はなぜ炎上を招いたか
定食分野で今やあの大戸屋を抜き去り、トップに躍り出たFCといえばプレナス社の「やよい軒」ですが、やよい軒のごはんおかわり有料化が物議を醸しています。
正確には、ごはんのおかわり有料化が問題になったのではありません。
「有料化する理由」が炎上を招く要因となりました。
その理由とは「顧客への配慮」だったのですが、顧客へ配慮したはずのやよい軒(”プレナス社の対応”と言うべきところですが、わかりやすさを重視し、以後「やよい軒」とします)はなぜ顧客や世間から批判を浴びてしまったのか。
私なりの考察を本記事で紹介します。
目 次
批判を招いた理由には3つの要因が潜んでいる
やよい軒が2019年4月より、一部店舗ながら実験的にごはんおかわりの有料化に踏み切りましたが、冒頭でお伝えしたとおり、有料化そのものが批判を浴びた訳ではありません。
やよい軒が有料化に踏み切った理由ですが、同社は
「一部の顧客から、ごはんをおかわりしていないのに料金が同じなのは不公平との意見があり、その意見に配慮した」
といった内容を有料化の理由として公表していました。
この理由が世間から反感を買ってしまった訳です。
この件について多くのメディアは
「「値上げを一部の顧客のせいにしている」との批判が殺到した」
といった伝え方をしています。
代表的な批判の声としては確かにそのとおりなのですが、この批判の裏側には、更に3つの要因が潜んでいます。
①:少数意見が本当に存在しているのかとの疑念
ひとつは
「一部であってもそのような声が本当にあるのか」
という強い疑念、納得感のなさを多くのユーザーが感じたことです。
「おかわり自由」というサービスは、別にやよい軒の専売特許ではありません。
飲食業界では比較的ポピュラーなサービスです。
おかわり自由はごはん以外にも、例えばサラダ、スープ、コーヒー、ラーメンの麺だとか様々なものがあります。
回転寿司店の「がり」や牛丼店の「紅しょうが」だって、立派な「おかわり自由」のサービスです。
ところが
「自分は紅しょうを食べてないのに、牛丼の値段が同じなのはけしからん」
といったクレームは、聞いたことがありません。
つまり、それほど珍しくもないサービスに、今更不公平だと難癖を付ける人が本当にいるのか、信じられないというのが、世間一般の見方です。
実際、批判の声には
「値上げをしたい本音を隠すための詭弁だ」
といった指摘もあり、やよい軒側の発表は信頼されていなかったことが伺えます。
仮にそうした批判が「事実」であっても、世間が理解、納得できる「情報」になっていなければ、問題化してしまうものです。
②:不公平解消が別の不公平を招いた
ふたつめは「不公平感を解消する」との狙いが、別の不公平を招いたこと。
この点はぜひフランチャイザー企業、FCオーナー共に真摯に耳を傾けて頂きたい点ですが、世間と言いますか、一般顧客の心理には
「自分と同じような不満を感じている人が少数派であれば、企業は耳を傾けてくれない」
との”あきらめ”の心理が、潜在的に刷り込まれていることを前提として、理解しておく必要があります。
企業側の対応が炎上するといった現象も、実はこうした顧客心理が背景にあると言われています。
「いつもは無視されるだけ」との諦めや不満が前提としてあるため、ネット上で自分と同様な不満の声を多数発見すると、それに乗じて追撃したくなるからです。
ところが今回のやよい軒の対応は、日頃は無視しているはずの「少数派の意見」を、なぜか突如採用した格好になってしまった訳ですね。
そのため世間から
「(いつも無視しているくせに)なぜその少数意見だけは取り上げたのか」
との強い不公平感を逆に与える結果ともなりました。
やよい軒としては
「少数の意見にもちゃんと耳を傾ける会社です」
との絶好のPRにもなるとの考えがあったかも知れませんが、であるなら日頃から少数意見に耳を傾け、こまめに対応すべきでした。
③:対応策は少数意見の不満解消にもなっていない
みっつめは、そうした不満を感じた一部の人々にとっても、不満解消にならなかったこと。
おかわりについて不公平だと感じている方の意見を翻訳すれば
「定食の料金にはおかわり自由の料金も含まれている。
その分まで、おかわりしない人が負担するのはおかしい。
おかわりしないのだから、その分安くしろ!」
となります。
要は、値上げや別料金にすることを求めたのではなく、「値下げ」が改善要望だった訳です。
にもかかわらず今回の対策はおかわりしない人にとっても料金が据え置かれた格好になったため、むしろ不満が募った可能性すらあります。
やよい軒に求められることとは
では今後やよい軒はどうすべきかですが、有料化”実験”は一旦5月末日に打ち切られたようですが、これで「終結」とはなりません。
もし有料化した理由が本当に「一部の顧客への配慮」であり、原材料費や人件費高騰といった経営的事情でないなら、有料化などそれこそ「時期未定」で見送るべきと考えます。
また、有料化の中止だけでなく、今回の批判に対する対応も求められます。
やよい軒としても、多々言い分はあるかも知れません。
が、世間の批判に対する反論や釈明など百害あって一利なしです。
敵対するような姿勢ではなく、批判の声に真摯に耳を傾け、その声に応えること、批判を浴びた事項については率直にお詫びすることも必要です。
果たしてそうした対応を、やよい軒が取り組めるかどうか。
こうした世間の批判を浴びた場面こそ、企業の真価が問われます。
FCオーナーを守らなければならないフランチャイザー企業としてどう振る舞うのか、やよい軒の今後の対応をじっくりと注視するつもりです。
-コンサルタントの視点
-やよい軒, 炎上, 理由
執筆者:フランチャイズという選択
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